3年半ほど前,「ふいんき」という記事で「『雰囲気』を『ふいんき』と発音する人が最近多いらしい」ということを書いた.最近,この「ふいんき」がよく話題になるらしく,あちこちの掲示板やブログ,それに「Yahoo!知恵袋」や「教えてOK」のような質問サイトから,しょっちゅう上の記事にリンクされている.
そんなこともあって,「『ふいんき』問題」を最近また考えていると,あることに思い当たった.
以前の記事では,「ふんいき」のイントネーションが共通語では「 _  ̄  ̄ _ 」で,関西弁では「 _ _  ̄_ 」であることをとりあげ,この点から話を進めた.つまり,「ふんいき」は「ふ・ん・い・き」の4拍で,「ん」にも「ふ」「い」「き」と同じ長さの拍が割り当てられていると考えていた.
ところが,「雰囲気」を「ふいんき」と発音する人にとっては,これが「ふ・いん・き」の3拍に聞こえていて,「ん」に拍が割り当てられていないのではないだろうか.
本来,日本語では各かな文字を対等な拍で話すようになっている.以前,NHKの海外向け日本語ラジオ放送の「海外在住日本人子女向け日本語講座」の番組を北欧で聴いたことがあるが,そこでは「『さようなら』を「さょ・なーら」などというリズムで話してはいけません.『さ・よ・お・な・ら』と,1拍ずつ手を叩きながら話す練習をしてみましょう」と言っていた.また,「ん」は母音ではないが,ひとつの音節を形成するとされている.俳句や短歌でも,「五・七・五」を数える際に「ん」は1拍に数えられている.
しかし,それがだんだん崩れてきており,それが「ふいんき」という発音が現れる原因ではないだろうか.実際,"olympic"は昔は「オリムピック」と書いていたのが,今では「オリンピック」と書いている.また,「原因」と「鯨飲」をどちらも「げー・いん」とほとんど2拍で発音しているのもよく聞く.
私の見解の当否はともかく,「ふいんき」派は以前の記事を書いた当時に比べてもますます増えているようである.私もいつか「化石」などといわれるようになるのだろうか.そういう私も,「平成」は「へ・い・せ・い」ではなく「へー・せー」と発音しているのだが.
(04. 12. 1)
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