空調服

「空調服」というものがあるらしい.背中にファンがついていて,服の内側に風を流して汗を蒸発させる仕組みで,非常に涼しいそうだ.

「汗をかいたらすぐに拭かないと,体が冷えて風邪をひく」と子供のころよくいわれたが,私はそれについて,次のような疑問をずっと持っていた.

汗をかくのは,汗が蒸発して体を冷やすことにより,体温を調節するためだ.だったら,汗を蒸発するまえに拭いてしまったら,体が冷えなくなって意味がないのではないだろうか.また,汗を拭かずにいると風邪をひくほど体が冷えるのならば,なぜそうなる前に汗が止まらないのだろうか.

「空調服」の説明によると,その答えは「汗がきちんと蒸発していないから」ということだそうだ.つまり,かいた汗がその場で完全に蒸発するようであれば,適切な温度まで冷えたところで汗は止まるそうで,「流れる汗」というのは「無意味な汗」なのだそうである.

そういえば,暑いときに半袖などの肌を露出した服を着るのも,よく考えればおかしな話である.厚い服よりも薄い服のほうが体の熱を貯めないから涼しいだろうが,肌を露出しても外の熱気を浴びるだけで涼しくはならないはずだ.

気温が体温より高く乾燥した土地に住む人の服は,長袖・長ズボンであることは,よく知られている.それに,まったく乾燥していない日本で発達してきた夏の着物だって,薄い生地でできているが半袖というのはない.

これらの服装に共通しているのは,首周りや袖口がゆったりとしていて風通しがいいことである.つまり,風通しがよく汗をきちんと蒸発させられれば,半袖より長袖のほうがよいわけである.涼しいヨーロッパの人と同じような風通しの悪い服装を,暑い夏に着ているのが間違っているのだ.

現在の「空調服」は,動力を使う必要があるという問題はあるが,開発の方向としては正しいと思う.さらなる発展を期待したいものである.

(04. 9. 12)