「ふいんき」

「雰囲気」を「ふいんき」と発音する人が最近多いらしい.「雰囲気」という漢字を見て,はじめて正しい発音が「ふんいき」であることを知った,という人もいるそうだ.

このような現象は珍しいことではない.例えば,「さざんか」は「山茶花」と書くことでわかるように,「さんざか」というのが元の発音だったそうだ.なるべく発音が楽になるように変化していくのである.

このことを根拠に,「だから,『雰囲気』も近いうちに皆『ふいんき』と発音するようになる」といっている人を見かける.しかし,私はそれには賛成しない.それは,地域によって発音が異なるからである.

共通語の「ふんいき」の発音の高低は「 _  ̄  ̄ _ 」だから,「ふいんき」のように,「いん」を一度に発音するほうが発音しやすいのもわからないではない.しかし,関西弁(京阪アクセント)では「 _ _  ̄_ 」だから,「ふいんき」と発音すると「ん」に強勢が来ることになって発音しにくい.大阪育ちの私も「ふいんき」なんて言わないし,大阪で周りに「ふいんき」という発音をする人はいなかった.

この文を読んでいらっしゃる方のほとんどは,「自分の話している言葉」は「日本語」だと信じていらっしゃるだろう.それは間違いないが,「日本語」は「あなたの話している言葉」なのではない.日本語にもいろいろあるのだ.

(01. 2. 5)

[03. 1. 16追記] メールマガジン「週刊ちびスタ」2003年1月15日号に,このページを引用したことを知らせていただきました.その記事によると,「ぼやきの広場」というサイトの「素朴な疑問編」「『雰囲気』の読み方」という記事があるのですが,そこには「関西出身の方に『ふいんき』派が多い」と,私の記事とは正反対のことが書いてあります.

私は,1992年に九州工業大学に就職して福岡に移ってから,学生に「ふいんき」という人が多いのを知って,大阪にいた頃の自分のまわりの人々と比べてこのような推論をしました.しかし,上のサイトのように感じていらっしゃる人がいるとすると,もしかしたら,「ふいんき」を使う人の割合には地域差ではなく世代差があるのかもしれません.そうだとすると,私の記事の主張は成り立たなくなってしまいます.もうすこし調べてみようと思います.

[04. 9. 5追記] 最近,下の通り,あちこちの掲示板やブログ,それに「知識plus」や「教えてOK」のような質問サイトから,しょっちゅうこのページにリンクされています.「ふんいき」と「ふいんき」,そんなに気になりますか?

[04. 12. 1追記] 「続・『ふんいき』」という記事を書きました.

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