強い敵

先日開かれた,女子バレーボール世界最終予選を何試合か見た.一時はオリンピックに出場することすらできなかった日本代表だが,最近は持ち直しているようだ.

私は東京オリンピックの年の生まれである.よく知られている通り,東京オリンピック女子バレーボールでは日本がソ連を破って優勝し,国民の熱狂的喝采を浴びた.だから,子供のころからバレーボールといえば「敵はソ連」であった.ソ連の選手は,日本の選手よりもはるかに大きな体で強力な攻撃を放ってきた.このような「力でねじ伏せる」ソ連チームに,体は小さくとも技で対抗する日本チームの姿が,バレーボールの人気の元であった.

しかし,最近の日本人は,このような「強い敵に立ち向かう者に共感をおぼえ,喝采を送る」という気持ちを忘れてしまったようだ.「強いものに立ち向かう」よりも,「自分も強いものにくっついていればトク」と考える人が多くなったように感じる.プロ野球で,「強いジャイアンツと戦って勝つ」ことにやりがいを感じるよりも「自分がジャイアンツに入ったほうが,美味しい思いができる」と考える選手に対する批判も,最近は弱くなった.ネット上ではさらにそういう傾向にあるのは,前に書いたとおりである.バブル時代に欲望がむき出しになり,その後の不況でなりふりかまわなくなったということなのだろうか.

私はそういう世の中の気分は好きになれないが,それが現実だというのならばしかたがない.だから,たとえば年金未納問題以来迷走気味の民主党は,支持を高めるためには作戦を変えたほうがよいと思う.強い小泉首相を攻撃する姿を国民に見せるのではなく,「自分たちのほうが強い」ことを見せる政策を示す必要がある.民主党がいままでで一番支持を集めていたのは,金融再生法案を小渕内閣に「丸飲み」させたころであるのを思い出してほしい.何より,小泉首相が,なにごとも他人事のようであるにもかかわらず,「なんとなく」支持されているのは,緊張感がなくてよくない.

(04. 5. 28)