「学会」とは本来は研究者の組織のことだが,学会が主催する研究発表会も一般に「学会」と言われている.このことは,以前「講義中の飲み物」という記事でも書いたとおりである.後者の意味の学会で気づいたことを少し書いてみる.
服装.学会では聴衆の前で研究発表の講演を行なうので,それなりにきちんとした服装をしていくのかというと,これがそうでもない.服装には傾向があって,応用に近い分野ほど,企業人が多いからかきちんとした服装をしている人が多く,基礎・理論に近い分野ほど服装にこだわらない人が多くなる.服装にこだわらない人はだらしないのではなく,「学問の本質を探求する人間は,服装のような瑣末なことに気を使う必要はない」という,これはこれでひとつのこだわりをもっているのである.
ところで,大学院生が着慣れないスーツを着て発表しているのは,ある意味微笑ましい.私は最近スーツを着ずにジャケットとネクタイだけになっているが,ちょっと初心を忘れつつあるようである.
質問.研究発表の講演の後には,必ず聴衆からの質問の時間がとってある.質問のしかたにもいろいろあるが,その中で気になるのが「やたらにへりくだった人」と「やたらに横柄な人」である.
「やたらにへりくだった人」とは,質問のはじめにいちいち「大変すばらしいご研究で,...」などと前置きをつける,いわゆる慇懃無礼な人である.大きな学会では質問時間は5分くらいしかないのだから,いちいち挨拶はいいからさっさと本題に入れといいたい.
かたや「やたらに横柄な人」とは,院生が発表しているときなど,相手の立場が弱いと見ると,上から物を言う態度に出る人である.いくら学生とはいっても,学会に来ているときは対等な研究者ではないだろうか.対等な研究者なのだから,礼を失するのもいけないし,逆に院生だからといって質問の内容で手加減してやる必要もない.
座長.「座長」とは劇団のリーダーではなく,講演会の司会者のことである.パソコン用プロジェクターやOHPなどの機材に何もトラブルがなく,聴衆からの質問が適度に出れば,座長はほとんど何もすることはない.しかし,質問が出なければ座長が質問をひねり出さなければならないし,逆にしつこい質問者や時間を守らない講演者がいれば適当なタイミングで打ち切らないと,時間どおり進行しなくなってしまう.
私が先日座長をしたときは,私の担当の時間帯になったとたんに機材にトラブルが頻発し,大幅に時間オーバーになってしまった.その後に予定されていた田中耕一氏特別講演会を楽しみにしていた人には申し訳ないことになってしまった.日頃の行いが悪いのか?
(03. 8. 16)