ルールとモラル

札幌市の地下鉄は,多額の赤字を抱えているそうである.しかし,雪で車の運転がしにくくなる冬は混んでいるそうだ.そこで,札幌の知人に「だったら,冬は値上げして,夏は値下げすればいいじゃないですか」と言ったら,「浅野さんはやっぱり大阪の人ですね.札幌の人は気のいい人が多いから,そんなエゲツナイことは考えません」と言われてしまった.

大阪人はよくえげつないと言われるが,確かに「人は,ルールの範囲内で最大限に目端を利かせるものだ」という感覚が,大阪育ちの自分にはある.「目端が利く」といえば聞こえがいいが,言い換えれば「ルールで許される最大限のズルをする」「ルールは99%しか守らない」ということである.だから,以前「新幹線の整列乗車」という記事で書いたように「モラルに依存したシステムは,モラルの低い人間には無力だ」「してよいこと,してはいけないことは,きちんとルールで決めよ」という考えをもつことになる.

だが,そういう考えは必ず一般的ではないのかもしれない.私は以前,あるメーリングリストの管理人をしていたが,そこで匿名あるいはハンドルネームで参加しようとする人が問題になったことがあった.「匿名参加者が,名簿屋等の悪意のある人間だったらどうするんだ」という参加者が何人かいたが,私は「参加者が名乗っている名前が実名であることを証明する方法はない.だから,匿名参加者を規制しても,悪意のある人間を排除することはできない」と主張した.結局,彼らとは相容れず,後に私は管理人を降りてしまった.

私の立場は「人はルールを99%しか守らない」から「ルールにないことは規制できない」であり,彼らの立場は「人はルールを120%守るのが当然だ」から「ルールに加えてモラルによっても規制すべきだ」からということになる.かつて森前首相が大阪のことを「たんつぼ」と言ったことがあるということだが,武家文化の加賀の国の人から「ルールを99%しか守らない人たち」をみれば,そういう印象になるのかもしれない.だが,私からすると,今住んでいる広島もどちらかというと「120%」のほうなので,少々窮屈ではある.

(03. 6. 16)

[06. 1. 24追記] 「『誰やそれ??!!』」という記事でも書きましたが,「ホリエモン」が逮捕されてしまいました.この件で,「法のスキマを突く」ようなやり方を非難する意見をよく見かけます.しかし,私にしてみると,それはけっして良いことではないけれど,スキマがあって正義が実現できない法のほうにも責任があるのではないか?と思ってしまいます.「点差が開いているときに盗塁してはいけない」といった,野球のメジャーリーグの"unwritten rule"にも納得がいきません.このような考えは,どうやら少数派のようです.