「パクリサイト」という言葉がある.他のウェブサイトの内容を勝手にコピーして作っているサイトのことである.「ウェブページを閲覧する」ことは「ウェブページの内容のデジタルデータを,自分のパソコンにコピーする」ことだから,ウェブサイトの内容をそっくり盗むのは非常に簡単である.
私も,運営しているサイトのひとつ「脱アルコール酒の楽しみ」の内容を,別のサイトで断わりなく利用されたことがある.幸いそれを相手方に指摘したら直ちに対応してもらえたが,こんなことはしょっちゅうあることだそうだ.
自分のサイトが,他人に盗用されるくらい有名になれば,それはそれでいいじゃないかという考えもあるだろう.とくに,私のサイトなど本業ではなく趣味のサイトだから,それでいいのかもしれない.しかし,盗用した方が有名になってしまって,本当はオリジナルのはずの自分のほうが盗用の疑いをかけられてしまう,ということになったら大変である.いくら自分のほうが本物だと主張しても,世間の人は有名な人の言うことを信じるだろう.どちらが本物かを技術的に証明する手段がない以上,信用がある(と感じられる)ほうが信用されるのはしかたがない.
そういうわけで,「脱アルコール酒」のサイトに関しては,早く有名になることをこころがけ,Yahoo!Japanに載せることに成功した.Yahoo!Japanは,同じ題材の後発のサイトは掲載しないという話を聞いたことがあるが,それが本当なら,とりあえず自分のサイトがオリジナルであることを支持する証拠を手に入れたことになる1).
アナウンサーの道浦俊彦氏の「『ことばの雑学』放送局」という本の,「セレブ」という言葉の項に「とにかく有名になりたい,何をしたかよりも,有名であることのほうが大事だ」と思う若者たちについて言及されている2).この本ではこの風潮について否定的に述べられている.確かにその通りなのだが,ことウェブサイトに関しては,「有名であること」は充実した内容のあとからついてくることなのではなく,「必要条件」なのではないだろうか.有名でないと,せっかく充実させた内容を守れないのだから.
(03. 5. 25)
1) 過去のウェブページを記録しているInternet Archiveも,どちらがオリジナルかを証明する助けになるが,新しいサイトがなかなか記録・公開されないという問題がある.
2) この本では,香山リカ著「若者の法則」が引用されてこのことが述べられている.