デジタル時計

中学生になったとき,両親に腕時計を買ってもらった.当時はまだ珍しかった液晶デジタル式であった.嬉しくてそれをずっと眺めているうち,あることに気がついた.

時刻表示の「秒」の桁をじっと見ていると,当たり前だが1秒ごとに数字が変わっていくのが見える.ところが,時計からしばらく目を離しておき,突然時計に視線を向けると,「秒」の桁が次の数字に変わるまでの時間が,1秒よりもわずかに長く感じられることがあるのだ.

その理由について考えてみると,おそらく,「液晶の表示が変わってから,表示が変わったことを脳が認識するまでの時間」よりも,「液晶の数字に視線を向けたその時から,脳が数字を認識するまでの時間」のほうが短い,ということではないだろうか.だから,液晶に表示される数字が変わった直後に時計に視線を向けると,「時計に視線を向けた瞬間に見えている数字を認識した時」から「『秒』の桁が次の数字に変わったことを認識した時」までの時間は1秒よりわずかに長い,ということになるのだろう.

これは私の仮説で,正しいかどうかはわからないし,どういう実験をすれば確かめられるかも知らない.ただ,本当の理由はともかく,この現象は「時計から目を離している間は,時計は秒の数字を表示するのをサボっていて,私が視線を向けると大慌てで『秒』の桁を表示している」ように思えて,デジタル時計という機械が微笑ましく,人間臭く感じられてしまう.

(04. 2. 13)

[04. 6. 5 追記]ここに「この現象,まさか私だけがそう感じているということはないと思うのですが...この記事を読まれた方,よろしければ試してみて,結果を教えていただければ幸いです.」と書いておいたところ,実験してくださったかたがいらっしゃいました.やはり私と同様に上のような現象を感じられたそうです.すこし安心しました.