国際会議

国際会議というと,国連安全保障理事会のように世界各国の代表が激論を交わしているところを想像されるかもしれない.だが,われわれ学者の世界では,国際会議というのは国際的に参加者を募って開かれる研究発表会のことである.

研究発表会だから,参加者は論文を提出して発表を申し込む.申し込めば誰でも発表できるわけではなく,論文が審査されて発表できるかどうかが決まる.審査するのもその分野の学者なので,審査の段階では論文の著者名を隠しておくことも多い.

私の主な分野である情報工学の国際会議は,一般にこの審査が厳しい.分野によっては,参加申込の際には論文の要旨のみを提出すればよい国際会議も多いが,情報工学ではたいてい数ページの論文全体を提出しなければならない.また,申し込まれた論文のうち採択される論文の割合,すなわち採択率は,50%以下なのが当たり前でもっとも高いものでも60%程度であり,厳しい国際会議では10%台のものもある.だから,情報工学分野では,国際会議での発表も研究業績として評価されることが多い.

国際会議への申込で最近頻繁に経験するのが,「締切の延長」である.締切は論文の募集を始める段階で当然決められているのだが,締切の直前になってこれが2週間ないし1ヶ月延期されるのである.主催者にとっては,締切の直前になっても十分な数の論文が集まっていないと焦るのかもしれない.だが,論文を提出する側にしてみれば,できるだけ締切ぎりぎりに提出したいと考えるのは自然である1).締切延長は嬉しいこともあるが,急に締切が変更されると仕事のスケジュールが狂ってしまう.

もっと偉くなって,締切を決める側にまわらなければならない,ということか.

(04. 2. 3)

1) 最近は,紙の原稿を航空便で送るのではなく,インターネットで電子原稿を送るので,本当に締切の寸前まで提出可能である.とくに,日本は時差の関係で世界の多くの地域よりも時間が進んでいるので,原稿受付サーバの設置場所を基準にした締切時刻を何時間か過ぎても提出可能で,少しトクをした気分になる.ただ,締切の直前はサーバが混雑して受付ができなくなり,結局締切が数時間延長されることも多い.