車輪空転

私は広島県東広島市西条というところに住んでいる.知人,とくに東日本に住んでいる知人からは,よく「広島は暖かいでしょう」というメールをもらう.しかし,ここは日本酒の名産地であるだけあって,冬は大変寒い.この時期は夜は毎日氷点下になり,先日は夜-8℃,昼-2℃と真冬日になった.同じ日には,北海道にさえここよりも暖かい土地もあったのである.

瀬戸内でありながら西条がこんなに寒いのは,ここが沿岸の呉市から見ると山を一つ隔てた内陸にあり,海抜約250mの台地にあるからである.このため,広島市から東広島市に向かうJR山陽本線の急坂は,明治以来難所として知られている.現在では,貨物列車には後押し用の機関車をこの区間だけ連結しているが,旅客用の電車は普通に走っている.

その普通に走れるはずの電車が,去年9月19日にこの区間で,坂を登れずに車輪が空転し立ち往生してしまうという事故がおきた.救援に向かった電車まで同様に立ち往生し,結局午後2時半から7時半ごろまでこの区間が不通になった.

信じられない事故である.なんでこんな,坂道で滑って登れなくなってしまうような電車しか走っていないのだろうか.同じJR西日本なのに,大阪付近では最新型の電車が走っているにもかかわらず,中国地方で走っているのは私が子供の頃大阪付近を走っていた電車ばかりである.

各JRは国鉄が各地方に分割されてできたわけで,一種の地方分権である.いま地方分権の必要性が話題になっているが,ただ単に地方ごとに道や州を作っても,このJRの例のようにその中で一極集中が起きるだけではないだろうか.是正しなければならないのは,いちいち集中しないと事が運ばない「構造」そのもののはずである.

(04. 2. 2)

[04. 6. 6 追記]冬の東広島の雪景色の写真を,「浅野の公的ウェブサイト」の写真集「游景」に掲載しております.