大学や大学院で勉強している人は「学生」であり,「生徒」ではない.「学生服」や「学生割引」のように,「学生」という言葉を中学校や高校の生徒に用いることはあるが,逆はないはずだ.
だが,大学生で自分たちのことを「生徒」という人が,最近増えたように思う.講義の際にとる授業評価のアンケートにも,自分たちのことを「生徒」という学生がよくいる.きちんと調べたわけではないが,女子学生に多いように思う.「ガクセイ」という音の響きが悪いと思うのだろうか.
些細なことだというかもしれないが,私はこれがどうも気になる.この種のアンケートには,学生からの講義に対する批判や要望を書くようになっているが,自分を「生徒」とよぶ学生は「生徒のレベルに合わせてもっと簡単にしてほしい」といったことを書く傾向があるようだ.「自分たちは子供なんだから」という甘えを感じるのだ.もっとも,これも統計的に調べたわけではないが.
そういえば,上にある「授業評価」という言い方も,大学で使っている正式名称だが,あまり好きになれない.私たちがしているのは「講義」であって,「授業」ではない.「授業」は決められた教科内容を確実に伝えるのを目的とするのに対して,「講義」は,広く深い学問の世界を話術を自由に駆使して説明し,話した内容以上の知識を知ろうとする動機を与えるものだと思う.「授業評価」では,「生徒」に評価されているような気になる.
(03. 6. 19)