最近,新幹線の運転手が居眠りをするという事件があり,睡眠時無呼吸症候群が話題になっている.このような病的な居眠りは別にしても,昔から「日本人はよく電車で居眠りしている」というのはよく聞く話である.この話は日本の電車内が安全であることの例とされてきたが,安全とは関係なく「日本人はよく居眠りする」という話を,最近あちこちで聞く.
ハワイ旅行をしたとき,現地のバスガイドは「日本人の観光客は,買い物のときは元気なのに,バスの中では皆寝ている」と言っていた.また,雑誌「アエラ」で,外国人を交えた会議で日本人がよく居眠りしていることが指摘されており,「日本人は体力ないから...」と言い訳している記事を読んだ.また,米国の日系企業に勤めている方のウェブサイト1)で,米国人社員に比べて日本人社員は朝が弱いこと,米国人社員は会議で居眠りしないことが述べられていた.
このことについて,単に「やはり日本人は白人に比べて体力がないのか」と思っていた.大学院生のときに,大学のオーケストラの演奏旅行でオランダとドイツに行ったことがある.向こうの演奏会は夜8時半ごろから始まるので,終わるのは11時を過ぎることがある.夏場ならば,聴衆はそれがすんでから家に帰って,さらに0時過ぎまで外にテーブルを出してビールを飲んでいたりする.しかし,翌朝はふつうに8時に出勤しているそうだ.また,バルセロナに国際会議に行ったときも,パーティは夜9時を過ぎてはじまり,0時を過ぎてからが本番といった感じで,日本人には途中で居眠っていたり帰ろうとしている人がたくさんいたほどだったが,翌日の日程はごく普通に朝から始まっていた.
ところが,先日のNHK「ためしてガッテン」の「必見!オトナの快眠術」という回を見てあることに気づいた.それによると,「夜の時間帯に強い光を浴びると,体内時計の時間が戻ってしまい,眠りに必要な物質であるメラトニンが体内で生成されにくい」そうである.
ここから先は,あくまで私の仮説である.真偽は定かではない.
日本人の朝の弱さや居眠りの原因は,家庭の蛍光灯ではないだろうか?
日本の家庭では蛍光灯の照明が多用されているのに対して,ヨーロッパの家庭の照明は白熱電球中心で,日本の家庭よりもずっと暗い.フィンランドで住んでいた学生アパートの部屋の照明は,60Wの白熱電球ひとつであった.わたしは,蛍光灯の電気スタンドを2つ買ってきて,部屋を明るくしていた.オフィスの照明は蛍光灯だが,日が落ちたあとの部屋で,手元だけの暗い照明でパソコンに向かっている人をよく見かけた.
日本では,明るい部屋でふだん生活しているせいで,メラトニンが十分にできない体質になっているために,同じ時間眠ってもヨーロッパ人よりも眠りが浅く,そのために朝が弱かったり居眠りしたりするのではないだろうか?
NHK「きょうの健康」の「これで解決!睡眠の悩み よい睡眠のための3か条」(2000年7月20日)によると,白色蛍光灯よりも電球色蛍光灯の照明のほうがメラトニンができやすいそうである.これも,「蛍光灯原因説」を示唆している.
とりあえず,私は仕事用のパソコン(Macintosh)の色調(色温度)を電球色照明に変えてみた.部屋の照明も電球色に変えてみようかと思っている.
しかし,それ以前に,パソコンに向かってこんな文章を書いていないで,早く寝よう.また夜が遅くなってしまった.
(03. 4. 16)
[2003. 5. 20追記] 1) 以前「このサイトが見つかりません」と書いていましたが,見つかりました.「もったいない国アメリカ」というサイトの,「働き蜂のアメリカ人!? の巻」と「会議で寝る日本人、絶対寝ないアメリカ人」というページです.
[2003. 5. 20追記] それにしても,もしこの「蛍光灯居眠り原因説」が本当なら,蛍光灯の普及は「国家的損失」ということになってしまう.しかし,先日,全日空の機内誌「翼の王国」で見た「電池式読書灯」の記事によると,やたらに部屋を明るくするのはオヤジ世代なのだそうだ.私もその古い世代の一員ということで,これからの日本では,蛍光灯の害は(たとえ本当に害があるとしても)心配ないということだろうか.
[2003. 8. 29] リンクを修正しました.
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