良い国・悪い国

教師には左翼が多いとよく言われる.たしかに,大学時代の友人に「高校のとき,音楽の時間はすべて北朝鮮の労働歌だった」という話を聞いたこともある.

だが,私が習った中高の先生の中では,むしろ右翼とよぶべき先生のほうが目立っていたように記憶している.教室に「國體は護持されたか?」というポスターを貼っていた先生もいた.また,「国際情勢を教えてやる」といって,ソ連がいかに悪い国であるかを説いていた先生もいた.当時はソ連のアフガニスタン侵攻があったり,アメリカのレーガン大統領が対ソ連対決姿勢を打ち出していたりで,「ソ連=悪い国」というのは常識のようになっていた.

当時の私は,周りの人が言うことをそのまま受け入れるのが何となくいやで,「大国というのは,ソ連もアメリカも同じようなものではないのか?」と思っていた.

ソ連がなくなった今,アメリカも「同じようなもの」であることは明らかになってきている.つまり,良い国や悪い国というのはなく,「われわれにとって都合の良い国」と「都合の悪い国」があるだけなのだ.確かに,当時のソ連は日本にとって都合の良い国ではなかった.

今回のイラク戦争で,日本はアメリカを支持する政策をとったが,はたしてアメリカは日本にとって「都合の良い国」であっていてくれるだろうか.ちょっと先行きが心配である.

戦後60年の間のわが国の生き方は,「終戦の詔」の「時運ノ趨ク所 堪ヘ難キヲ堪ヘ 忍ヒ難キヲ忍ヒ 以テ萬世ノ為ニ大平ヲ開カムト欲ス」に象徴されるのではないだろうか.何にせよ,平和を維持できたことは立派だと思う.今後もうまく行くことを祈っている.

(03. 4. 2)