テレビの「土曜ワイド劇場」に,高橋英樹さんが長距離フェリーの船長に扮しているシリーズがある.船の中で事件が起き,船長夫妻が日本のあちこちを飛び回って事件を解決する,というやつである.
「船長」という言葉の雰囲気から,ドラマの中の船長夫妻の優雅な暮らしになんとなく納得してしまう.しかし,冷静に考えてみると,船長というのはそんなにヒマなのか,という疑問がわく.だが,実際のフェリーの船長がどんな生活をしているのか,私はまったく知らない.自分か知り合いが海運業界にいるのでなければ,たいていの人は知らないだろう.
誰にとっても,その生活の実態を知っている職業など限られている.だから,船長だけでなく,たいていの職業に対して人々がもつイメージは,なんとなくその職業に抱いている印象と,このようなドラマやフィクションでの取り扱いに影響されている.「政治家」「官僚」「刑事」という職業など,まさしくそうだろう.
そして,「大学教授」もそのようなイメージをもたれている職業のひとつのようだ.やはりテレビドラマで,加藤剛さんが大学教授に扮し,事件を調べて解決するものがあった.これに限らず,ドラマの中の大学教授は,立派な身なりで立派な家に住み,そして,週に一度くらいしか大学に行かず,いかにも時間がありそうである.しかし,私も大学教員であるが,とても探偵をしているヒマはない.
最近の大学改革の論議を聞いていると,適切な指摘もある一方で,「大学教授は,ヒマそうにしているくせに,高い給料をもらってリストラの心配もない」という偏見に影響されていると思われる意見もあるようだ.われわれ大学教員も,真の姿をアピールする必要があるのだろうか.
(02. 8. 19)