「脳障害児が,特別な訓練を積んだ結果,母親の手助けで文字盤を指し示すことによって意思疎通ができるようになり,いくつも詩集を発表している」という内容のNHKスペシャル「奇跡の詩人」が話題になっている.詩を書いているのはその脳障害児・日木流奈君ではなく母親自身ではないのか,という疑問が出て,そういう本も最近出版された.
「奇跡の詩人」が本当かどうかについては,私にはわからないし,ここでは触れない.ただ,彼の能力が本当だとしても,私にはこの番組を見て考えさせられたことがある.
彼は,脳障害があっても,それを補って余りある才能をもっている.しかし,当然ながら世の中のたいていの人間は凡人なのだから,障害があるがそれを補うほどの才能はない人のほうが普通のはずだ.それなのに,そういう「特別な人」をとくにとりあげて賞賛しても,世の多数の「普通の障害児」の医療や福祉の向上には役にたたないのではないだろうか.
番組中で,日木流奈君の講演会の様子が紹介されていた.聴衆の,脳障害をもつ女の子と母親を,流奈君が激励している場面があった.かわいそうだが,彼女には障害を補って余りある才能があるようには見えなかった.
参考ウェブサイト:
Online Luna(日木流奈君の公式サイト)
モニャ★デザイン(「奇跡の詩人」問題のまとめサイト)
(02. 7. 15)