日韓はワールドカップの共催国ということで,日本のマスメディアでは「韓国を応援するべきだ,応援して当然」という雰囲気が作られている.果たしてそれは正しいのだろうか.
フィンランドにいたとき,スウェーデンとの国境の町Tornioを訪れたことがある.北から南に流れてきてTornioとスウェーデン側の町Haparandaの間でボスニア湾に注ぐTornio川が,フィンランドとスウェーデンとの国境になっている.TornioとHaparandaは連続した双子の町で,この両市では両方の国の通貨が使用可能である.
Tornio,Haparanda両市から北に,Tornio川に沿って,フィンランド側とスウェーデン側で双子になっている町がいくつも並んでいる.中には,フィンランド語とスウェーデン語の違いだけで同じ名前がついている町もある.Tornioの観光案内には,この地域のことがフィンランド語で"maailman rauhallisin valtionraja"すなわち「世界で一番平和な国境」と記されている.
では,フィンランドとスウェーデンの両国は仲が良いのだろうか.以前自分のウェブサイトの「フィンランドと隣国」という記事にも書いたが,決して「仲が良い」わけではない.かつてフィンランドはスウェーデンに支配されていた歴史があるので,とくにフィンランド側にはわだかまりがある.だから,フィンランドではアイスホッケーでスウェーデンに勝つと大騒ぎになる.北欧の地図からスウェーデンを消したものが,フィンランドの大学の掲示板に貼ってあるのも見たことがある.
ヨーロッパには,こんな例がたくさんある.ヨーロッパ統合の動きが進んでいるが,彼らは決して「仲良く」しているわけではない.先の大戦では,英仏が勝ちドイツが負けたのではなく,米ソが勝ちヨーロッパはすべて負けた.それを教訓として,共倒れにならず「共生」できるように,わだかまりはわだかまりとして協力しあっているのだ.
日韓が「共生」の関係になるために必要なことは,表面的にまた感情的に「仲良く」することなのだろうか?隣国というのは利害がぶつかり合うから,仲が悪くて普通なのだ.それよりも,利害を調整して協力できるところで協力し,誰かが漁夫の利を得て自分たちが共倒れになるようなことがないようにするほうが,大事なのではないだろうか?
(02. 6.30)