報道操作と誤訳

疑問の残る判定が韓国戦で続いているのに,「共催国のことだから」ということからか日本のマスコミではあまり報じられていない.また,韓国では日本が敗退したときに大喜びしていた人もたくさんいたことは,私は在韓の日本人でも韓国人でもない知人から聞いたが,このこともあまり大きく報道されず,日本を応援している韓国人のことばかりが報道されている.

こういう報道操作も困ったものだが,さらに気になるのが,外国の新聞等が報じた記事の翻訳記事である.誤訳,というよりも,意図的に誤訳しているのではないかと思われる節がある.

例えば,共同通信が配信した,仏紙リベラシオンの記事では「(東京の)ホテルマンは陰気。イングランドやアイルランドのファンらは愛想を尽かして、山谷の労働者街に宿替えした」と書かれている.これについては,原文(仏語)の「ホテルマンは憂鬱である.なぜならば,高い値段のせいでファンらは...宿替えした(ホテルに泊まってくれなかった)からだ」という内容を誤訳したものであることが指摘されている.また,以前のシドニーオリンピックでの柔道誤審問題では,日本の新聞で「ニュージーランドの新聞が,審判に日本から抗議メールが殺到していると報じた」という記事が出たが,これも原文ではただ「メールが届いた」と書いてあるだけだった.

単なる誤訳なのか,あるいは何か意図があるのか,それは知らない.ただ,今はインターネット時代だということを忘れてもらっては困る.世界中の新聞が手元で読めるし,その話題に関心のある人同士の情報交換も簡単だから,少々の情報操作があってもどこかでばれてしまう.ヨーロッパ語同士なら機械翻訳も結構役に立つ.

いま私は,統計学の講義の時に,学生に外国の新聞を読むことを勧めている.ひとつの出来事について,複数の独立した情報源があれば情報の精度が上がるのは,統計学の基本である.さらに,情報の真偽を見抜き取捨選択する「メディアリテラシー」の能力も鍛えられる.

[追記]実を言うと,上の共同通信の記事の誤訳は私が発見したものではなく,ネット掲示板の書き込みで見つけたものである.ただ,その書き込みが正しいという保証はない.そこで原文をあたると,「ホテルマンは陰気(憂鬱)」と「ファンらは...宿替えした」の間に":"がある.これは,結論を先に言って,後から「それはなぜかというと...」と理由を言う言い方である.フランス語があまりわからなくても,こうやって情報を引き出すことはできる.

掲示板で,誤訳を指摘する書き込みをされた方に,感謝いたします.

(02. 6. 30)