子供のころ,子供のけんかを仲裁するのに「先に手を出したほうが悪い」という大人がよくいた.
私は,どうも納得がいかなかった.相手を挑発して,手を出させる方は悪くないのだろうか.いくら子供でも,理由もなくいきなり誰かを殴るような子はそうはいない.手を出すような状況に追い込んだ者のほうが,「先に手を出した」といえるのではないだろうか.
しかし,今考えると,それは現在の社会のルールに沿っているのだということがわかった.現在の社会では,物理的な暴力や物の破壊は,厳しく禁じられている.しかし,相手を挑発する言動や,不愉快な思いをさせるふてぶてしい態度は,さほど禁じられていない.
先日,サッカーのチケット販売のトラブルで,チケットセンターで暴れた若者が逮捕された事件があった.チケットセンターのほうはどういう対応をしていたのかはわからないが,たとえものすごく失礼な対応をしていても,それは罪にはならない.
私が広島駅で新幹線の自由席に乗る列に並んでいたとき,小さな子供連れの女性が列に割り込んだことがあった1).私の前にいた人が注意したが無視していた.私も不愉快極まりなかったが,ではここで私が実力で彼女を阻止して,彼女に騒ぎ立てられたりしたら,私のほうが分が悪くなってしまう.もしかしたら現在の職も失ってしまったかもしれない.結局,中国新聞に投書するぐらいしか鬱憤を晴らすところはなかった(この投書は,それに対する反応もあわせて掲載された).
やはりどうも納得いかないところはあるが,「仇討ち」のような自力救済を許していては,力の強いものが勝つか,それとも銃社会になるかだ.どうもしかたないようだ.
(02. 6. 11)
[2005. 1. 20追記] 1) 「『ウエストひかり』の思い出」という記事(2001年11月3日)に,なぜこんなに混んでいるのかを書いています.
[2006. 1. 23追記] 「新幹線の整列乗車」という記事もご参照ください.