ソルトレークシティ・オリンピックのショートトラック競技で,日本の寺尾選手が不可解な判定で失格とされた問題で,日本チームが出した異議はあっさり却下されてしまった.フィギュアで判定が訂正されて金メダルが追加して授与された直後ということもあって,大変な無力感を感じる.シドニーオリンピックのときの柔道誤審問題を思い出す方も多いだろう.
今回も柔道の時も,現場で日本のコーチらが審判団に抗議しても「はいはい,わかったからあっち行って」と軽くいなされて試合が続行され,後で何を言っても結局判定は覆らない,というふうに見える.
これと対照的なのが,ソウル・オリンピックのときのボクシングの騒動である(当時の記事)1).韓国選手が不可解な判定で負けとされ,激昂したコーチがリングにあがってレフェリーを投げ飛ばしてしまい,さらに会場の照明が消されて大混乱となり,その後の試合ができなくなってしまった.レフェリーは警官に守られて退場したが,その間も観客に暴行されたという.この騒ぎで,選手やコーチは無期限出場停止となり,大韓ボクシング連盟会長は辞任することになってしまった.また,リンク先の記事にある通り,韓国の新聞もこの騒ぎを強く非難した.
だが,その後オリンピックのボクシングではルールが大きく改正され,有効打の数の多少で勝敗を決める「コンピュータ採点」が採用された.ある意味,騒ぎは無駄ではなかったとも言える.柔道の時も,もし日本のコーチが主審を投げ飛ばしてしまったら,コーチは無期限資格停止になっても「審判が畳を降りたら,異議は一切認めない」というルールは変わったかもしれない.
鬱憤がたまってもルールを守って我慢するか,捨て身になっても言いたいことは言うか,国家の場合でも,個人の人生に置き換えて考えてみても,難しい問題である.
(02. 2. 23)
[追記]上のようなことを書いていたら,アップロードする前に事態はどんどん進み,とうとうロシアや韓国がボイコットを示唆する事態となった.もうめちゃくちゃである.ホームタウンディシジョンというのはよくあることだが,今回のは度が過ぎている.
[04. 8. 21追記] アテネオリンピックの柔道をテレビで見たが,今回は審判団が協議して判定を決める場面が多く見られた.また,今日の朝日新聞の記事によると,審判の判定が審査されており,その日の評価の高い審判が準決勝以上を判定することになっていたらしい.今回のオリンピックでは,素人目に見ても,互いに十分技を出し合う,見ごたえのある試合が多かった.シドニーのときの騒ぎは無駄ではなかったようである.
[04. 8. 21追記] 読売新聞の「この10年」という企画で1988年当時の記事が再掲されていたのですが,現在はなくなっているようです.
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