助教授と助手

先日,ある企業の研究所を訪問した.門の守衛さんに「本日おうかがいすることになっておりました,広島大学の浅野ですが」と告げると,守衛さんは「あっ,浅野助教授ですね!(他の守衛さんに)おーい,浅野助教授(の名札)!」と大変丁重な感じで応対していただいた.このことからも,「助教授」が「教授」と同様に敬称と捉えられているのがわかる.

これが「助手」だったら,「あっ,浅野助手ですね!」と本人に向かっては言わないと思う.つまり,「助手」は敬称ではなく,尊敬を受ける職業ではない,とみなされているのだろう.実際,私が助手だったころ,私の名刺を見た人に「博士なのに,なんで助手なの?」と聞かれたことがある.

ところで,実際のところ,教授・助教授・助手の違いは何だろうか.「給料の違い」と言ってしまえばそれまでだが,その給料の違いの原因は大学内での権限と義務の違いであって,研究能力の違いではない.もちろん,研究や教育の実績がなければ昇進はできないが,過去の実績は必ずしも「現在の」研究能力とは一致しない.教授になった人には管理職に専念している人も多く,若い助手やあるいは大学院生が研究の中心であることは,ごく普通である.

「助手」というと,実験の手伝いで試験官を洗っているようなイメージをお持ちの方も多いのではないだろうか.実際には,助手は教授の研究を助けているというわけではなく,主体的に研究を行なっている.このような誤解をなくすために,「助手」という名称をやめて「研究員」とでもしたらよいのではないかと思う.

なお,私は33歳のときに助手から助教授となったが,その際月給は5万円以上上がった.これは,ボーナスも入れて年収で考えると,90万円以上の上昇である.同じ年齢・学歴で同じ時期に国立大学教員になった人でも,もっと早く助教授に昇進した人は,さらに高い給料をもらっているわけである.国立大学教員という公務員でも,「同期間格差」は,大きいとは言わないが結構あるのがおわかりいただけるだろう.

(01. 9. 24)