トップ30大学構想

文部科学省が,「トップ30大学を世界最高水準に育成する」という方針を打ち出し,話題になっている.先日の「週刊朝日」には,さっそく「トップ30」に入る大学はどこか,という記事が出ていた.また,同じ「週刊朝日」のその前の週の号には,各学問分野について「その分野に強い大学ベスト10」のようなランキングが出ていた.

しかし,研究能力・実績を大学単位で評価するのは無意味だ.大学の研究は,学長や学部長が方針を決めて組織的に行っているのではない.各教員が独立して行っているのだ.医学部・工学部等では教授が助教授・助手を指揮して研究グループを作っている「小講座制」をとっていることが多いが,その場合でも研究内容を決めて予算をとってくるのはそのグループの教授であって,学部長や学長の支配を受けているわけではない.

つまり,評価されるべきは大学ではなく,大学にある研究グループなのだ.よく新聞記事等で「○○大グループが××を発見」と報じられるが,それは○○大の業績ではなく,その研究グループだけの業績である.上の「何々分野に強い大学」というのも,単にその分野で業績をあげている教員あるいは研究グループがその大学にある,ということにすぎない.大学全体がその分野に力を入れているわけではないし,その分野に重点を置いたカリキュラムを組んでいるわけでもない.受験生がこの雑誌の記事を信じて大学を選んで入学しても,その教員のグループに入れるかどうかわからないし,卒業研究をやるころには,その教員はよその大学に移っているかもしれない.

「トップ300教授」ならまだわかるが,「トップ30大学」はナンセンスだ.

(01. 6. 24)