大学の講義は,大まかに「教養」「専門」「大学院」の3つに分類される.「教養」はおもに低学年に割り当てられ,自分の専門以外の知識を身に付けるための講義が開講される.また,工学部生に対する数学の講義など,専門科目を学ぶための基礎知識の講義は,本当は「教養」ではなく「基礎」というべきだが,通常「教養」に分類されている.
これに対し「専門」では各学部・学科を卒業するために必要な専門知識が講義される.また,「大学院」では,さらに内容が高度・専門的になるだけでなく,学生自身がそれぞれ分担して講義し教官が助言するセミナー形式の講義など,ある程度学生の知識のレベルを前提にした講義が行われる.
上のとおり,内容は「教養」→「専門」→「大学院」と進むにつれ高度になる.では,教える側の教官としても,この順に講義するのが難しくなるのだろうか?
実は,それは逆なのだ.私はこの3種類の講義をすべて担当しているが,教養の講義が一番難しい.なぜならば,教養の講義では,受講している学生の専門や興味の方向,予備知識がばらばらなのに,それらの学生が共通して興味を持ち,理解できて,かつ内容のある講義をしなければならないからだ.これに対して,専門の講義では学生の興味の方向はほぼ一定になってくるから,講義の内容も狭い範囲でいい.さらに大学院の講義では,かなりの予備知識が前提にでき,学生の積極性も十分と考えられるので,研究の先端について講義してもかまわない.
たとえ話でいえば,
「教養」では,なぜこの料理を食べなければならないのかを説明して,スプーンを口にもっていって食べさせてやらないといけない.
「専門」では,献立を用意して配膳すれば,あとは学生が自分で食べる.
「大学院」では,料理の作り方だけ説明すれば,あとば学生が自分で作って食べる.
ということだ.
しかし,当の大学教員の間でも,教養の講義など簡単に教えられるという偏見を持っている人は多い.教育の充実のために,よく考え直してほしいものである.
(01. 6. 19)