私が勤めている広島大学の生協の食堂では,冬場はカキフライがメニューに出る.さすが広島だけあって,学食でもけっこうおいしいので,よく食べている.
ところが,ひとつ困ったことがある.それは,カフェテリア方式のカウンターで「カキフライ」と注文すると,しょっちゅう「アジフライ」と聞き間違えられることだ.私は大阪出身で,アクセントが広島の人とはちがうこともあって,自分の発音がそんなに聞き取りにくいのかと思って食堂のおばちゃんに聞いてみたところ,「あなただけではなく,誰が発音してもよく間違える」ということだった.
「アジ」と「カキ」の発音を比べると,母音は同じで子音だけが異なっている.この2つの発音がうまく聞き分けられないということは,子音がよく聞き取れていないということだ.どちらも第1音節に強勢をおいて発音するから,とくに子音[k]の有無がよく聞き取れていないことになる.
[k]は破裂音で,高い周波数成分を含んでいる.「日本人は,高い周波数域が聞き取りにくいので,英語の聞き取りが苦手だ」という説を聞いたことがあるが,あながちまちがいではないように感じる.
また,「日本人は,英語を話す能力に比べて聞く能力が低い」という話も聞いたことがある.私も,外国でいろいろな国の人どうしが英語で話しているとき,話すのはたどたどしいのに,ネイティブスピーカーがスラスラ話しているのを完全に聞き取れている外国人によく出会った.
さっきの「日本人は高い周波数域が聞き取りにくい」というのは,「だから,高周波数域を強調した音楽を聞かせて耳を訓練すれば英語が聞き取れるようになる」という趣旨の訓練器具の広告が主張している説である.理にかなっていると思うので興味はあるが,5万円はちょっと高い.
ネット上の体験談では,「効果がないわけではないが,広告に出ているような劇的な効果はない」というのが多いようだが,実際のところどうなのだろうか.
(01. 5. 18)