辞任と罷免

最近に限ったことではないが,例えば先の戦争を肯定するなどの問題発言による閣僚の辞任というできごとがよくある.そのときの理由として,「世間を騒がせたことをおわびし,辞任します」と言っている閣僚がよくいる.

これは,何かおかしくないだろうか.「世間を騒がせたことをおわびする」とは,自分の発言は間違っているとは思っていないが,まわりが騒ぐのでとりあえずおわびする,というように聞こえる.要するに「とりあえず謝っておいて丸くおさめよう」と言っているのだ.

だいたい,政治家は発言するのが仕事なのに,少々文句を言われたぐらいでそんなに簡単に発言がひっくりかえっていいのだろうか.簡単に謝って訂正するくらいなら発言しないほうがいいし,自分の発言は間違っていないと思うのなら簡単に謝ってはいけない.

どうしても辞任してほしければ,首相が首相の責任で罷免すればいいのだ.首相は,閣僚が自分の政策にためにならないと思えば,いつでも罷免できる.その時は,発言が正しいかどうかは関係なく,首相の方針に合っていない閣僚だから罷免するのだ.以前,発言が中国・韓国に批判された藤尾正行文相がこのように主張して,中曽根康弘首相が罷免したことがある.戦後閣僚が罷免されたのはこの一例だけだと聞くが,私は藤尾氏も中曽根氏も支持しないけれども,この行為はまったく正しいと思う.

「とりあえず謝っておこう」という文化は,人間関係を円滑にするが,謝っておきながら裏で舌を出しているかもしれない,という不信感も感じさせる.とくに,文化を共有しない外国にはこういう習慣は受け入れられにくい.戦争責任問題で今も日本の謝罪にこだわる国があるのも,日本は謝罪する裏で舌を出しているのではないか,という不信感が感じられるからではないかと思う.

(01. 2. 26)