茶髪

先日,勤め先の大学で期末試験の監督の手伝いをしたときに,退屈しのぎに茶髪・金髪の学生の割合を数えてみた.とくに試験の初めのほうでは,全員下を向いて一生懸命問題を解いているから,頭が全員前を向いていて,数えるには好都合である.

93人の学生中,髪を染めている学生は37人であった.工学部のクラスだから,女子学生は5人しかおらずほとんどが男子だが,それでも4割が髪を染めていた.キャンパス内の女子学生に至っては,黒髪を見つけるほうがむずかしいくらいである.「『黒山の人だかり』という表現は実情に合わない」と言っている人がいたが,まさしくその通りである.

茶髪にする理由は,「黒髪は重苦しい.茶色は軽快」というのが多いそうだ.その通り,黒髪は重苦しいと思う.以前フィンランドに留学中,北欧人のさまざまな色の金髪・茶髪を見慣れていたときに,日本のテレビ番組のビデオをひさしぶりに見たときは,写っている人の髪が全員黒いことに,重苦しさとものすごい違和感を感じた.

それでも,私はこの重苦しさ,いや,重厚感が好きだ.国際学会に出席して思うが,西洋人,とくにアメリカ白人にはTシャツにジーンズという格好で講演する人もいるが,あれは黒髪・黒目の東洋人には似合わない.しかし,東洋人はきちんとスーツを着ていると実にかっこいいと思う.それに,黒髪は西洋人には強い印象を与えるようだ.フィンランドのアパートで同室1)だった人は,私が留守中に私を訪ねてきた人を「日本人かどうかわからないが,black hairだ」と表現していた.

私は,別に茶髪を認めないわけではない.北欧のように,いろいろな髪の色の人がいても何もおかしくないと思う.しかし,私自身は自分の黒髪を誇りに思っているし,ずっと保とうと思っている.ところが,最近鏡を見ると,髪の光の反射がどうもすこし茶色っぽい.栄養が偏っているせいなのだろうか.

(01. 2. 25)

1) フィンランドの学生アパートでは,個室の寝室3つに共有の台所・シャワー・トイレがついて1つの部屋になっている構造のものが多い.