バトル・ロワイアル

別に,残虐であってもかまわないと思う.人間には「こわいもの見たさ」という欲求があるし,虚構の世界だからその欲求を安心して満たすことができる.だいたい残虐な映画なんて,夜中のCS放送で流れているVシネマにはいくらでもある.それをいうなら時代劇だって毎回大量殺人だ.

子供に悪影響を及ぼすかといえば,もしかしたら及ぼさないかもしれない.戦時下でもないわが国の子供にとって,虚構の死に対する感覚は,分別のある大人が思うよりも鈍感だ.ただ,親の年齢になった私としては,子供に見せたいとは思わないが.

そんなことよりも,私が言いたいのは,別のことだ.

雑誌「SPA!」2000年12月27日号に,映画「バトル・ロワイアル」を監督した深作欣二氏と,その息子で脚本を担当した深作健太氏のインタビューが出ている.その冒頭で健太氏は次のように言っている.

(聞き手)今回,健太さんはプロデュースと脚本を担当しましたが,それはどういう流れで決まったんですか?
(深作健太)そもそも昨年の4月,『バトル・ロワイアル』の単行本が出て,すぐに僕が買ってきたんです.で,家のどこかに置いていたのを監督(欣二氏:筆者注)が見つけ,<中学生42人,皆殺し>という帯に惹かれ,「面白そうだ.俺が映画にする」って読みもしないで,持っていっちゃって(笑).(以下略)
(下線は筆者)

結果的にどんな立派な内容のある映画になっているのかは知らないが,やっぱり要は人殺しを撮りたかったのか.なぜ,「人殺しが見たい」と本音を言わないのだ.最初にいったように,「こわいもの見たさ」という欲求は別に悪いものではない.

ただし,欲求を直接満たすことは,ポルノと同じで,人間社会においてはあまり品のいいものではなく,恥ずかしく後ろめたいことだろう.だが,欲求を満たしたければ,その恥ずかしさや後ろめたさは受け入れなければならない.それを,命の大切さがどうのと言い訳をして,表舞台に出ようとするのは見苦しい.

原作の小説について賞の選考委員が「こういうことを考えること自体が不愉快だ」と言ったそうだが,委員にそう言わしめたのは,この作品がそのような恥ずかしく,後ろめたいものであるにもかかわらず,堂々と表舞台に出ようとしたからだと思う.

(01. 2. 23)
(01. 2. 25加筆改訂)
(01. 2. 27さらに改訂)