以前は,この時期になるとひたすらチョコレートのコマーシャルが流れ続けていたように思う.最近は「義理チョコ」などという言葉が定着したせいか,お中元やお歳暮のような単なる年中行事になっているようだ.「1ヶ月後にお返し」という習慣まで作ったことも,年中行事化を進めた一因かもしれない.
大学のクラブの,女性の先輩が,バレンタインデーを前に「この日だけは,本当に女でよかったと思う」と言っていたことがある.そのころ彼女は会社勤めをしていたが,いわく「1年に1度,男性社員の成績通知表が発表されるようなものだ」とか.
私自身は,中学生のころ,そんな気分になったことがある.自分がチョコレートをもらえなかったのも残念だが,それ以上に,人より体がデカイことをいいことに横柄な態度をとっていた,私の嫌っていた男が,チョコレートをもらっているのを見たのがショックだった.女はああいう男がいいのか,自分のような「オモロイやつ」はしょせんだめなのか,と悩んでしまった.
このできごとは,長い間心の隅にひっかかっていた.バレンタインデーのあたりはだいたい試験期間なので,バレンタインデーに学校を休むわけにはいかなかったが,物欲しそうな顔をしているのではないかと気になって,正直なところ誰とも顔をあわせたくなかった.
そんな思い出も今は昔,今は勤め先の大学の事務室の方々から毎年チョコレートをいただく以外,バレンタインデーなど無縁な生活を送っている.お世話になっているのは圧倒的にこちらのほうなので,事務員の方々には,3月にはおいしいお菓子を持ってゆく.おすすめはやっぱり福岡・天神のウィーン菓子「オーバーラー」だ.
(01. 2. 14)
(04. 8. 6加筆)
[03. 1. 5追記] 福岡の「オーバーラー」は,残念ながら閉店した.