勤め先の大学でも,期末試験の時期だ.試験といえば,不正行為,いわゆるカンニングが問題になる.これに対しては「不正行為が発覚した場合,その学期の全単位を抹消する」という規則になっている大学が多いようだ.大学生のとき集中講義に来ていた,アメリカで教えた経験のある先生によると,アメリカの大学では不正行為をすると退学になるのが普通らしい.
しかし,不正行為を摘発するのは容易ではない.重大な罰を与えるのだから,動かぬ証拠をあげなければならない.横の人の答案を盗み見た,ぐらいでは,物証がないから摘発できない.カンニングペーパーを使ったといっても,隠されてしまったら身体検査をするわけにもいかない.そもそも,教員は刑事ではないのだから,「摘発」は得意ではない.
だから,不正行為をしないような工夫をすることになる.私の講義の試験では「プリント・ノート持込可」にしているのもそのためだ.まわりの数学の先生には「指定の紙1枚だけ持込可,何を書いてきてもよい」という人もいる.
ところで,以前「えげつない」不正行為の話を聞いた.答案用紙を回収する際,後の席から前へ順に用紙を送ってくることが多いが,その隙に出来のいい他人の答案の名前を消して,自分の名前をそこへ書いて提出したというのだ.ではなぜ発覚したのかというと,元の自分の答案も一緒に提出してしまったかららしい.まったく間抜けな話だが,今までこんなことが成功していたのかもしれないと思うとぞっとする.自分が不正に点数をとるだけでなく,人を不正に蹴落とすとは最低である.
きのうはある先生の試験監督の手伝いをしたが,この先生は回収の前に鉛筆等をすべて片付けさせていた.いろいろな知恵があるものだ.
(01. 2. 10)