関西人の源流

正月に大阪に帰省したときに,狂言「酢薑(すはじかみ)」を見た.酢売りと薑(当時は山椒の樹皮からつくる香辛料を意味した)売りが道で出会い,それぞれ自分が売っているものの由緒を述べ,「売り物の司」であると主張する.そこで,酢売りは「げがさを着て行くわ」,薑売りは「から(辛)かさを差いて行くわ」などと秀句(シャレ)を言い合い,うまいシャレを言ったほうが勝ちと言うことにしようということになる.ところが,互いにおもしろいことを言って笑いあっているうちに,「よく考えれば,酢と薑は切っても切れぬ仲であるな」ということになって,一緒に大笑いで仲直り,という話である.

この室町時代の酢売りと薑売りは,関西人の源流と言うところだろうか.この「おもしろいヤツのほうがえらい」という価値観は,関西の文化には今も健在である.

関東の知人に,「関西では『あいつはオモロイヤツや』というのは褒め言葉だ」という話をしたら,「『オモロイヤツ』なんて言われたら,頭に来るよ」と言っていた.500年たっても,文化というのはそうは変わらない.

(参考:「太郎冠者」 http://www.tarokaja.com/

(01. 2. 10)

[04. 7. 9追記]狂言を演じるのに使われている言葉は,室町時代の京言葉だそうである.確かに,よく聞くとイントネーションは関西弁(京阪アクセント)に聞こえる.私が大阪で通っていた高校に,卒業後に赴任された国語の先生は「古文は京都の言葉,つまり『関西弁』で書かれているんだから,関西人は音読すれば意味がわかるはず」と言っていたらしい.高校生の時にそれに気づいていれば,私の古典の成績ももっとよかったかもしれない.