庶民のファンファーレ

プログレッシブ・ロックの名曲のひとつに,Emerson, Lake, and Palmer (EL&P)の「庶民のファンファーレ」というのがある.この曲は,アメリカの作曲家Aaron Copland氏が,Cincinnati Symphony Orchestraから「戦時のファンファーレ」を委嘱されて,1942年に作曲した同名の曲がもとになっている.

EL&Pの「庶民のファンファーレ」では,ヤマハのエレクトーンGX-1が演奏に使われた.キーボードプレイヤーのKeith Emerson氏は,インタヴューで「5万ドルもするGX-1を自分で買った」と言っていた.1980年ころの話で,国内ではGX-1の価格は700万円であった.当時高校生だった私は,「『ブルジョアのファンファーレ』じゃないのか?」と思ったものだ.

そのころロックに興味を持っていた私は,バンドのキーボードプレイヤーにあこがれていたが,当時電子楽器は非常に高価であり,結局夢をかなえることはできなかった.その後大学で交響楽団に入ってコントラバスを弾いたり,就職してからは室内楽(いわばクラシックのバンド)をやったりしたが,ロックバンドへのあこがれは,やはり今でもある.

幸い,デジタル技術の進歩により電子楽器は安くなり,いまやキーボードプレイヤーは一番金がかからないとまで言われるようになっている.この間,NHKで「オヤジロッカー」の大会をやっていたが,私もいつかあんなふうに演奏してみたいものだ.

(01. 1. 28)

[01. 1. 30改訂] 以前ここに「この曲の原題は"Fanfare for the Common Man"である.「庶民」というのは誤訳ではなかろうか?「普遍的な人類に贈るファンファーレ」といった感じではないかと思う.」と書いていましたが,これは私のまったくの誤解でした.Oxford Advanced Learner's Dictionary of Current Englishには,commonの項に"the common man = the ordinary or average citizen"と書いてありました."The common man in every country wants peace."という例文も載っていました.