物忘れ

私は,子供のころから物事をよく忘れるほうであった.よく「前の日の夕食の献立を忘れるようになったらボケの始まり」だと言われるが,私は子供のころから,たいてい前の日の夕食の献立は覚えていない.

どうも,関心がいったん離れるとすぐ忘れてしまうようなのである.私は大学の教員をしているが,自分の研究室の学生のいる実験室に行って,学生と一旦話をすると,そのときに持っていた書類等はたいていそこに置き忘れていってしまう.

大学院生のころは,研究室にある談話室で誰かが「コーヒーでもいれよか?」と声をかけると,飲みたい者が「頼むわ」といって自分のカップをもちより,休憩が始まるというのが常であった.私は,そういうときはいつもカップを持っていくのだが,談話室のテーブルにカップを置いて計算機の前に戻ると,カップを持っていったのを忘れてしまい,いつも後から冷たくなったコーヒーを飲んでいた.

今日,大学の実験室の隅でコーヒーをいれながら,学生とその話をしていた.自分のカップを持って自室にもどり,仕事を再開したら,やはりそのコーヒーを飲むのを忘れてしまい,また冷たいコーヒーを飲むことになった.

(01. 1. 27)