大江戸捜査網

しばらく前に,CSテレビの「時代劇専門チャンネル」で「大江戸捜査網」の第1シリーズが放送されていた.1970年に開始された,オーケストラによる印象的なテーマ曲と「死して屍拾うものなし」の台詞が有名な番組である.

「大江戸捜査網」の舞台は,田沼意次失脚の後の寛政の改革の時代である.老中松平定信の命をうけた旗本寄合組・内藤勘解由が組織した「隠密同心」が,復権を狙う田沼一派の残党と戦う.

その中に,「また田沼様の時代のようになったら,金持ちはますます富み,貧乏人はますます貧乏になってしまう.そんな世の中にしていいのか?」というような内容の,主役の杉良太郎氏の台詞がある.

今なら,「そうだ.それで何が悪い」と言われてしまいそうである.こういうところが,70年代と現在との「時代の空気」の違いなのだろうか?そういえば,このころの時代劇には田沼意次を悪役に描いているものがたくさんあるが,最近は田沼意次は「資本主義への移行を理解していた人物」として再評価されているようである.

私の職業は大学教員である.大学審議会の答申にある大学改革のキャッチフレーズは「競争的環境の中で個性が輝く大学」だそうだ.しかし,「競争的環境」は結構なことだがそれは実際には「大学間の身分差別」であり,「個性」とは「身分相応」の意味であると感じる日々である.これも時代の空気であろうか.

(01. 1. 26)