昨年末に,スカパーの「時代劇専門チャンネル」で,いろいろな忠臣蔵映画をまとめて放送していた.12月30,31日には連続放送があったので,大晦日には紅白歌合戦は見ず1日中忠臣蔵を見続けていた.もう筋書きは十分に知っているのだが,映画によってそれなりに描き方の違いがあって,飽きないものである.また,古い映画では刃傷から討ち入りに至るまでのお決まりのストーリーしかやらず,いきなり「上野介が浅野家の進物の少なさを見て不平を言っている」シーンから始まる映画もあった.しかし,後になるほど事件の背景も扱うようになっており,内匠頭がなぜ刃傷に及んだのかも,単に「上野介が悪いやつだったから」という描き方ではなくなってきている.
私は,自分も「浅野」なので,子供の時からどうも忠臣蔵は他人事に思えないでいる.小学校のとき,児童にあだ名をつける先生がいて,よくタクミノカミと呼ばれて嫌な思いをしていたこともあった.だがそれ以上に他人事に思えないのは,内匠頭の正義感・規律感の強さ,そして挑発に乗って見境なく爆発してしまったことに,自分の人間性も似ているように思うからだ.自分も上野介のような老獪な上司にかかったら,ああなってしまうかもしれない.幸い,今までそういうことはなかったし,自分には路頭に迷う家臣もいないが.
ところで,「浅野」という姓は岐阜に多く,現在の岐阜市長も浅野氏である1).内匠頭の浅野家も元をたどれば岐阜の出身で,いわゆる「美濃源氏」の流れを称している.先祖の浅野長勝は,秀吉の妻おねの養父であり,大河ドラマ「秀吉」にも登場した.私の家も祖父母の代までは岐阜におり,「秀吉の一夜城」で知られる墨俣に本家がある.もしかしたら,どこかで血がつながっているかもしれない.そして,美濃源氏にはさらに有名な人物がいる.それは明智光秀だ.やはり,と思ってしまう.
(02. 1. 13)
[追記]昔と今の忠臣蔵映画で一番違うのは,上野介の首をとる場面である.昔の作品では上野介が命乞いをして醜態をさらす,というものが多かったが,最近の作品ではこのシーンにメッセージをこめるようになっている.大河ドラマ「元禄繚乱」では,上野介(石坂浩二)が内蔵助(中村勘九郎)に「まことに,御供を仇と思うてか?」と語りかけ,内蔵助が(幕府に物申すという)討ち入りの真意を「目だけで」答えて上野介も承知する,というシーンが印象に残っている.
[2004. 3. 5追記] 1) ちょうどこの記事を書いた2002年1月に,当時の岐阜市長・浅野勇氏は,選挙違反事件の責任をとって辞職した.[岐阜新聞・2001年12月28日付記事]
[2005. 1. 20追記] 2004年12月17日に「続・忠臣蔵」という記事を書きました.