ついでだから新幹線の話をもうひとつ.
子供のころ,NHK「みんなのうた」で「新幹線ひかり号のうた」というのが流れていた.「じそーくにひゃーくごじっきろー,とんでるようだな,は・し・る,ビュワーン・ビュワーン・ビュワーン,はしるー」という歌詞であった.
そのころの「ひかり号」は,最高速度は実は250km/hではなく210km/hであった.今,私は毎日東広島駅から「こだま号」に乗るが,ときおり目の前を「500系のぞみ号」が300km/hで通過してゆく.あれを見ていると,「ビュワーン・ビュワーン」というのは高々210km/hや220km/hの速度の形容であることがわかる.300km/hの列車は,「ビュワーン・ビュワーン」などとのんびり言っている暇はない.遠くのほうから「ゴゴゴゴ」という地鳴りがしたかと思うと,「ドカーン」という衝撃波とともに走り抜けてゆく.
雑誌「SPA!」の,自動車を取り上げている連載で,一度だけ東海道山陽新幹線の電車が取り上げられたことがある.そのなかで,「自動車に例えれば,『500系』はひたすら速く走るF1マシン,『700系』(現在の主力電車)はその技術をフィードバックして作られた市販車」という意味の記述があった.実際そんな感じで,世界最高速を誇る「500系」は高価でコストが合わないらしく,まもなく285km/hしか出ないが安価な「700系」に主力が移ってしまった.
ちょっとさびしい話ではある.「700系」は居住性を売り物にしていて,実際快適な電車である.しかし,「500系」は,デザインからして子供のころ絵本で見た「みらいのでんしゃ」そのもので,いかにも技術の粋を集めて作られたという感じがする.夢のあるものが,現実的なものにとってかわられるのは,資本主義の世の中では仕方がないのだろうか.それとも,いちいちそんなことを考えるのは,私が理系人間だからだろうか.
(01. 11. 04)
※「500系のぞみ号」の写真.夏休みなどになると,今でも親子連れが記念写真を撮っている.
|
「500系のぞみ号」の先頭.登場当時は,駅に進入するときカメラのフラッシュがまぶしくて運転手が困ったという(この写真はフラッシュなしで撮影した). |
|
まるで飛行機である. |
|
車内の電光掲示板に「ただいま300km/hです.」と表示されている.登場当時は,必ず女性の車掌が乗務していて,「ただいま当列車は時速300kmで走行しております.どうぞ世界最高速の旅をお楽しみください」とアナウンスしていた. |