先日,香港に行ってきた.表題の「機場快綫」とは,香港の市内と空港とを結ぶ専用の高速鉄道である.これが実にうまくできている.
空港で税関を出ると,そこに切符の販売機がある.それを買って到着ロビーに出ると,目の前に電車が来ている.階段どころか段差すらない.改札もない.空港以外に乗車駅はないので,市内の降車駅で切符をチェックすればいいからだ.列車は10分に1本程度の頻度で出ているそうで,時刻表はなく,待ち時間の表示機がある.この駅からは出る列車は1種類しかないから,行き先や停車駅などを間違える心配もない.
ホームには転落防止用のドアがあって安全である.各車両には,幅の広いドアが中央に1つだけついている.ドアのまわりは荷物置き場で,客席は,荷物置き場をはさんで荷物置き場に向かって座るように並んでいる.だから,客席に座っていて荷物置き場に目が届く.日本の空港連絡列車(「成田エクスプレス」や「はるか」など)では荷物置き場がデッキにあるので,盗難が心配である(事実,日本のものと同じような構造のフランスの列車で,デッキの荷物の盗難事件を目撃したことがある).
市内の駅では,ホームにある改札口を出て目の前のエレベータで上がると,そこに各ホテルを巡回するバスが待っている.このバスは無料だ(頻度は20分に1本だそうだが).
市内から空港へ向かうときも,各ホテルのそばにあるバス停から無料でバスに乗れる(航空券を提示しなければならないとバス停に書いてあったが,チェックはされなかった).駅に着くと,各航空会社のチェックインカウンターがあって,そこで搭乗手続きをして荷物も預けることができる.あとはエレベータでホームへ降りて電車に乗るだけだ.
外国に行ったとき,空港から市内への交通機関がわかりやすく便利だと,大変安心でき,歓迎されているように感じる.一方,日本の成田・関西の両空港は,「日本の玄関口」として非常によく整備されているが,空港から市内への交通は,乗換が遠かったり階段が多かったり,きっぷが複雑だったりして,どうも不親切だ.飛行機を降りて次に乗る交通機関も,玄関口の一部として整備すべきではないだろうか.
しかも,上にあげた「機場快綫」の特徴は,いずれもちょっとした工夫であり,たいしてお金をかけずに実現することばかりだ.財政難の今,このような「ソフトウェア的工夫」はとくに重要なはずだが,空港連絡に限らず,このような工夫が足りないと感じる交通機関や都市機能は多い.
(01. 9. 5)
[追記]「機場快綫」の欠点は,市内の駅が中心街と離れているのに,地下鉄との連絡が悪いことだ.九龍の中心街を通る地下鉄に乗るには,郊外の途中駅で降りて2回乗り換えなければならないようだし,香港島にある香港駅と地下鉄の駅とは歩いて10分ほどかかるそうである.
[追記]大阪にも,大阪シティーエアターミナル(OCAT)という市内で搭乗手続きができる施設が,JR難波駅の上にある.しかし,JR難波駅は以前は湊町駅と言われていたところで,近鉄難波駅・地下鉄なんば駅とは,動く歩道ができたもののかなり遠い.しかも,おかしなことにJR難波駅から関西空港行きの列車は出ておらず,空港へはバスで行かなければならない.空港行きの列車が出ている南海なんば駅は,近鉄・地下鉄よりもさらに遠い.だから,OCATを利用する客はほとんどおらず,大半の航空会社が撤退してしまった.お金をかけて施設を作っても,ソフトウェアが悪くては全く意味がない.