勉強の目標

半年の講義の中盤や終わりにアンケートをとると,「内容が難しい」「もっと簡単にしてほしい」という意見が必ずみられる.

これが予備校なら,「わかりやすく説明してくれ」という意見はあるかもしれないが,「簡単にしてほしい」という意見はないと思う.それは言うまでもなく,必要な難しさが,大学の入学試験によって決まっているからだ.

ところが,大学では,そのような「要求水準」がないことがしばしばである.とくに「教養的教育」ではなおさらである.目標がなければ,ふつうの人間は努力するのは難しいし,易きに流れるものだ.だから「簡単に単位がほしい」という学生の要求はもっともだとも言える.しかし,この要求にあわせていると,内容はどんどん易しくなってしまう.とくにこれからは,教員が学生に評価されるようになるので,教員のほうも易きに流れ,内容を簡単にして学生にいい点数をつけてもらおうという誘惑にかられることになる.

そこで,自分の講義では「要求水準」を学生に納得させようと,いま案を練っている.幸い,私が「教養的教育」で教えている統計学は,文系理系を問わずどの分野でも使われている.だから,最初の講義で,これから習う統計学の先にどのような統計学があり,どのような分野でどのように使われているかを示すことで,これから習う統計学が,実際に仕事で使う統計学からみれば基礎の基礎であることを納得させようと思う.

(01. 8. 15)