中国新聞に,作家の赤坂真理さんの「イメージ先行 許す国民―参院選の異様なむなしさ」という記事が出ていた.その中に,
選挙の日に道を走っていて,前を走るタクシーのステッカーが目に入った,「技術より心で運転する人,募集します」.頼むから,技術で運転してくれ.迷惑だから.イメージだけで何かをわからせたように思う伝達者を私は憎んでいる.
という記述があった.
まったくそのとおりだ.「技術より心」という台詞には,「難しいものは回避して,雰囲気だけを重視する」だけでなく,「難しいことを言う者を軽蔑する」雰囲気さえ感じる.
最近,「理科離れ」を防ぐ方策として,「理科の楽しさを教える」ための実験教室が各地で催されている.しかし,これが本当に「理科離れ」を防ぐことになるのだろうか.子供たちが離れているのは「楽しい理科実験」ではなく,「難しいことをきちんと考える理科」なのではないだろうか.
難しいことを考えることを疎ましがる雰囲気がなくならない限り,理科離れはなくならない.また,離れられているのは理科だけではなく,文系理系を問わずすべての「勉強」だ.数学や理科は「難しいことをきちんと考える」ことが直接表に出るから目立つだけである.
(01. 8. 12)