山間部の高速道路

しばらく前,「ニュースステーション」に扇国土交通相がゲスト出演したさいに,久米宏氏が「自分は日本の高速道路の半分を自分で運転して走ったことがあるが,地方の高速道路にはどこも車は走っていない.日本にはもう高速道路は要らないのではないか」と言っていた.

久米氏には「高速道路を走って行ったところへ,一度,高速道路を通らずに行ってみなさい」と言いたい.

関東平野のような平地に住んでいる人は,「高速道路の下には高速道路に沿った一般道がある」と思っていないだろうか.道路上からはあまり気づかないが,山間部の高速道路は,尾根を貫き谷をまたいで建設されている.もし高速道路がなかったら,峠を何度も上り下りし,急カーブの連続した道路を走らなければならないのだ.

広島市と島根県浜田市の間に浜田自動車道という高速道路がある.交通量の少ない高速道路の代表としてよく批判されている路線だ.しかし,沿道にある島根県山間部の瑞穂町や旭町では,広島まで4時間かかっていたのが1時間半に短縮されたそうで,救急車が急病人を広島市内の病院に運べるようになった.このように,山間部の高速道路の時間短縮効果は劇的である.

また,浜田自動車道の出現により,日本海の新鮮な魚が広島へ入るようになっただけでなく,広島県・島根県の山間部のスキー場へ福岡から日帰りできるようになった.そのため,福岡をはじめ九州の人々にスキーをやる人が増えてきた.交通は文化にまで影響するのだ.

道路建設などの公共事業にともなう利権に群がる行為が間違っているのであって,道路建設自体が間違っているわけではないはずだ.自分が運転するとき以外にも,高速道路の恩恵を思い出してもらいたいと思う.東京の人は「江戸前」のものだけを食べているわけではあるまい.

(01. 3. 14)