2月26日の中国新聞のコラムは「『花粉症は気にするから余計にひどくなる』と周りの花粉症に縁のない人たちは言うけれど,当人にとっては深刻だ」という内容から始まっていた.私もいままでいろいろ病気を患ったから(花粉アレルギーもある),こういう心無い発言に傷つけられることも多かった.
病は気から,というのはある程度事実だ.だから,新薬のテストでは,必ず,その新薬を飲んだ患者と,見かけや味がその新薬と変わらない偽薬を飲んだ患者とで効果を比較する.ただの砂糖のかたまりでも,薬と思って飲めば効くこともあるからだ.だが,現に病気にかかっている者にすれば,健康な者に「病は気から」だと言われると「本当は体は悪くないのに,怠けている」といわれている気がする.病気にかかっているのは,自分が何か悪いことをしたからではないのだ.
花粉症はまわりから見てもわかるから,まだいい.私がいまでも持っている喘息は,発作が出ない限り,患者本人はまったくケロッとしている.ましてや,中学生のころ患っていた腎臓病に至っては,本人をいつどこからどう見ても病気のことはわからない.それなのに運動を制限されて体育を見学しなければいけないので,怠けているように言われて,かなり嫌な思いをした.
だいぶ前,中曽根首相(当時)が広島原爆病院を訪れた際,入院患者に「病は気からといいますから」と言ったというので問題になったことがある.中曽根氏としては患者を励ますつもりで言ったのだろうが,病気の人の気持ちは本当のところはわからなかったのかもしれない.ふだんどんなに立派なことを言っていても,こういう場面で心無い失言をする人は,弱者の立場を本当は考えようとしていない人物だと言われてもしかたないと思う.
(01. 3. 3)
[追記]就職する際,就職先に提出するために健康診断を受けた.そのとき,「中学生の時『遷延性腎炎』と診断されたが,現在は尿・血液の検査結果に異常はない」という話を医師にしたら,その医師は「腎炎がそんな簡単に直るはずがない.それはそのときたまたま尿蛋白が出ていただけで,腎炎というのは誤診だ」と言っていた.そういえば,中学生のときの主治医は腎臓病が研究テーマだったようで,治療法も二転三転したし,どうも実験台に使われていたような気がする.この医者は,小児科医のくせに患者の前でたばこをスパスパ吸うし,特定の患者や親にだけは親しくしているのに私たちには大変横柄な態度で,嫌な感じだった.運動を制限されたりして失った青春を返せと言いたい.