累進課税

最近,所得が多いほど所得税率を大きくする「累進課税制度」の累進率を緩和しよう,すなわち高額所得者の税率を下げようという主張をよくみかける.そこでは「がんばった人が報われる制度にすれば,皆が意欲的に金持ちを目指すので,経済が活性化する」「金持ちになることに罰金を課すような制度はおかしい」などと述べられている.

しかし,これは詭弁だ.現在の税制では,本当にがんばった人が報われないのだろうか.もし,「所得が増えると手取りが減る,またはほとんど変化しない」ということなら,それは金持ちに対する罰金に等しく,おかしな制度と言えるだろう.しかし,わが国の税制の累進率が国際的に見て高いのかどうかは知らないが,とにかく,いくら稼いでも手取りが増えないという状態ではない.「いくら稼いでも税金に取られてしまうから,金持ちになるのをやめた」という人は聞いたことがない.

累進率緩和をいう人は,「貧富の差を大きくして,金持ちに富を集中させたほうが,まとまった投資が行われて経済が活性化する」と本音を言えばよいではないか.ただし,そのときは,親の資産や地位といった「生まれてから以後の努力でカバーできない理由」によらず,誰もが金持ちを目指すチャンスをもてる社会にすることも主張しなければならない.また,金持ちには,社会全体に貢献するような投資を行うというモラルを求めなければならない.さらに,犯罪の増加など,貧富の差の増大による社会全体のストレスというマイナス面も受け入れなくてはならない.私は日本がそういう国になってほしくはないが,それが国民の主流の意見になるなら,それはそれで仕方がない.とにかく,本音で議論しよう.

(01. 2. 22)

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