今これをパソコンの画面で読んでいらっしゃる方は,MS-IMEやATOK,EGBRIDGEなどの日本語入力システムを使いこなしていらっしゃることだろう.では,そのシステムの操作のしかたを,すべて文章に書いて説明してくれ,と言われたらどうだろうか.ものすごくもどかしい仕事で,できればやりたくないとおっしゃるのではないだろうか.
電子メールは便利だが,基本的には文章しか書けない.図を添付することもできるが,それには何かのツールで図を描いて保存して,と結構面倒である.ましてや,黒板に図を描きながら説明するのと同じことをメールでやるのは,ほとんど不可能だ.だから,電子メールで人に質問するのは簡単だが,それに電子メールで答えるには,直接相手に会って説明するよりも何倍も手間がかかる.
メーリングリスト等では,これがもめごとのもとになる.それでなくても,質問に答えるのは調べもの等も必要であり,質問するよりもはるかに労力がかかるのに加え,電子メールで説明するのだからさらに手間がかかる.参加者の中で答える立場の人物はどうしても限られてくるから,「もっと質問を明確にしてくれ」「こっちが親切で答えてやってるのに勝手な要求をするな」「何でも質問せずに自分で調べろよ」などという態度になってくるし,質問する方はそういう人たちに対して「自分で調べられないから聞いているんだよ」「何だよ,常連だからって偉そうに」という印象をもつことになる.
私も,メールで安易な要求をしたために友人をなくすという,悔やまれる失敗をしたことがある.しかし最近は,担当の統計学の講義録をウェブに掲載している関係で,メールでの質問に答える立場になることもあり,やっと両者の立場がわかってきた.正直なところ,質問に対して「ちょっと調べたらわかるのに」と感じることもある.しかし,丁寧に答えた返答に感謝のメールをいただくと,大変うれしいものだ.互いの立場を理解して,建設的なネット社会にしたいものである.
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