旧石器時代の遺跡の,出土品の捏造が問題となっているが,その関係のニュースを見ていて気になることがある.
捏造を行った藤村新一氏を,名前を言わずにいちいち「民間の考古学者」と表現していることだ.
あれだけ大々的に報道された藤村氏をいまになって匿名にしているのも解せないが,それよりもいちいち「民間の考古学者が捏造した問題で...」などと何度も言われると,「しょせん『民間の』学者だからそんなことをするんだ」と言われているような気がしてくる.
そもそも,「民間でない」考古学者って何だろうか?おそらく,大学などのポストについている学者をさしているのだろうが,では大学教授は絶対に捏造などせず,言うことは完全に信用できる,といえるのだろうか?
私は,そのように「発言者のもつ権威」によって信用するかどうかを決める態度は,もっとも恥ずべきものだと考えている.
(01. 1. 23)
[06. 1. 23] この事件から5年,今は韓国のクローンES細胞捏造問題が話題になっています.この事件を韓国社会と結びつけて論じているのをよく見かけますが,日本にもこんな事件があったのを忘れてしまったのでしょうか.あるいは,昔イギリスで起きた有名な捏造事件である「ピルトダウン人事件」1)のことが,あまり触れられないのも不思議です.これらの捏造事件では,いずれも,捏造された「成果」がその国民にとって求められていたものであり,また疑いを挟んだ人のほうが責められる,という経緯をたどっています.いつでも,どこの国でも起こりうることなのでしょう.
1) 関西医科大学法医学講座のサイトにある,「法医学鑑定の話題」の項に,「捏造された猿人,ピルトダウン人事件」という記事があります.
私は,井上ひさし氏の「犯罪調書」という本で,「ピルトダウン人事件」のことを知りました.そこでは,ピルトダウン人の発見に疑いを挟んだ人が「非国民」と罵られ,「<非国民>という罵言は,どうも日本人だけの専売特許ではないらしい.」と書かれています.