しばらく前,ある高校に,進路指導の講演に行ったことがあった.私は情報工学の研究者として,情報工学関係の学部を志望している高校生に話をした.そこで,ある生徒に「なぜ情報工学を志望するのか」を尋ねてみた.「はやっているから」という返事であった.
しかし,IT革命が順調に達成されていれば,彼らが大学や大学院を出るころには,情報工学は「はやりの学問」ではないかもしれない.それは,IT革命とは「コンピュータを電話にすること」だからだ.
電話が出現したとき,それは驚異的な情報技術だっただろう.電話を使いこなせるビジネスマンは時代の先端を行っていたわけだし,電話の技術者は最先端技術者だったはずだ.しかし,長年の技術革新のおかげで,電話は誰でも使えるものになった.電話の技術者は今でも必要不可欠な人材ではあるが,とくに最先端技術者としてもてはやされることはない.
これこそがIT革命である.いま言われているIT革命も同じで,その目的はコンピュータを電話のように誰にでも使えるようにすることだ.だから,それが達成された時には,ITは当たり前のものになり,「IT以外」の知識や技術が重要になる.
高校生諸君には,その時を見越して,コンピュータの知識だけでなく,基礎学力を磨いておいてほしいものである.
(01. 3. 13)